2012年6月2日土曜日

食い逃げを見た

食い逃げを見た。
無銭飲食とも言う。

見かけたのは、西口にあるラーメン店でのことだった。

その日、給料日も過ぎて、懐には若干の余裕があるというタイミングもあったせいか、事務所の仲間たちとラーメンでも食べて帰るかという話になった。

行くことになったのは5人組。
いつも行っている西口のお店である。
店はまずまずの混み具合で、少しあいだ外で待つことになった。

待つ間に、お金をATMでおろすとか、なにやらで3人が街に消えていく。
席が空いたと呼ばれたときには、一人しか帰ってきていなくて、
3人でまず座席に通された。
間をおかずにひとりが戻り、メニューを眺めている間に、さらにひとりも帰ってきた。

テーブル席から見えるカウンタ席の男が、
ジャケットを小脇に抱えて、店員に
「連れがくるから、隣の席空けといて」と言い残して、外へ出ていった。

ややこわもての店員さんが、制止する間もなく、男は店を出て雑踏へ姿を消した。

「ラーメン屋のカウンタで待ち合わせとは変なの」と思わないでもなかったが、テーブルの方に注文したラーメンやセットメニューのおかずが届いても一向に帰ってくる気配がない。

店員さんどうしで、空いた席を見ながら話をしている姿を見て、「食い逃げなのか」と思いはじめた。

カウンタには、ほぼ食べられたラーメンと一口飲んだか飲んでいないかのジョッキが残されている。
「タバコを買いにいってくる」でも、「ちょっと電話するから」でも口実をつけて外に出れば、出られないことはない状況だし、店員さんもそのことで食い逃げではないかと疑いをかけるのもやりにくいだろう。

並んでいる客も案内しなくてはいけないし、多忙といえば多忙、その隙をついた”犯行”だった。

わたしたちが食べ終わるころには、「空けておいて」と言われた隣の席も別の客が通されていた。

芝居がかったことをしても、得られるのはたかだか1食分にすぎない。それほど、貧乏で困っている身なりにも見えなかったし、ゲーム感覚なのだろうか。押さえきれない衝動みたいなものがあるのだろうか。

食い逃げとは、ほんとにわりにあわない犯罪にも思えるのだが、どうなんだろう。




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